痛いの痛いの飛んでいけの続きとは?知られざる由来と科学的根拠
幼いころ、転んで膝を擦りむいたとき、親や保育士がそっと手を添えて唱えてくれた「痛いの痛いの、飛んでいけ」。不思議と大泣きしていた涙がすっと引き、ズキズキとした痛みが和らいだ経験を持つ人は少なくありません。あの瞬間に感じた安らぎは、単なる子どもの思い込みや気休めだったのでしょうか。
実はこの親しみ深いフレーズには、日本各地に伝わる「知られざる続き」が存在します。それだけでなく、古代の信仰や「手当ての語源」にまで遡る文化的な発祥、さらには現代の脳科学や小児医療が解き明かした極めて合理的なメカニズムが隠されていました。大人になった今こそ知っておきたい、魔法の言葉に秘められた真実を紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「痛いの痛いの飛んでいけ」には「遠くのお山へ」や「すずめの学校へ」など、地域や時代ごとの多彩な続きが存在する。
- 要点2:古代の「撫でもの(形代祓い)」や「手当ての語源」に由来し、痛みを外界へ転嫁・浄化する民俗信仰がルーツにある。
- 要点3:ゲートコントロール理論、オキシトシン分泌、プラセボ効果など、現代医学・小児看護学でも確固たる鎮痛根拠が実証されている。
【知られざる続き】「痛いの痛いの飛んでいけ」の後に続く言葉とは?
幼少期から慣れ親しんだ「痛いの痛いの飛んでいけ」ですが、実は「飛んでいけ」の後に続く決定的なフレーズが存在します。もっとも広く伝承されている代表例が、「痛いの痛いの飛んでいけ、遠くのお山へ飛んでいけ」というバリエーションです。人の生活圏から離れた自然の彼方へ痛みを放逐することで、子ども自身に「もう痛みは戻ってこない」という安心感を抱かせる心理的意図が込められています。
さらに地域や家庭の口承文化を深掘りすると、驚くほど多彩な展開が見受けられます。
- 自然・遠方へ送る型:「〜遠くのお山を越えていけ」「〜お空の雲まで飛んでいけ」「〜海の底へ沈んでいけ」
- 鬼や異界へ送る型:「〜鬼ヶ島へ飛んでいけ」「〜閻魔様のところへ飛んでいけ」
- 第三者へ転嫁するユーモア型:「〜お父さんのお尻へ飛んでいけ」「〜隣のばあちゃんちへ飛んでいけ」
- 生き物・童話型:「〜すずめの学校へ飛んでいけ」「〜カラスにかじられていけ」
昭和から平成にかけて制作された絵本や教育番組、童謡の世界でもこの言葉は親しまれてきました。たとえば童謡として知られる楽曲『痛いの痛いの飛んでいけ』(作詞:サトウハチロー氏など、時代ごとに複数の関連歌が存在)の歌詞や、民俗伝承の手遊び歌のなかでも、痛みという負の感覚を鳥や風に乗せて遠景へと飛ばす情景が情感豊かに描かれています。単に言葉で痛みを否定するのではなく、「飛んでいく先」を具体的にイメージさせることが、子どもの意識を傷口から逸らすための重要な工夫として機能していたのです。

言霊と「手当ての語源」に見る発祥の歴史|民俗学が紐解くルーツ
なぜ日本人は痛む場所に手を触れ、「飛んでいけ」と念じるようになったのでしょうか。その発祥を探ると、日本古来の言語観である言霊(ことだま)信仰と、神道における「祓い(はらい)」の儀礼に行き着きます。
古代日本において、病気や痛み、怪我は目に見えない「邪気」や「穢れ(けがれ)」が身体に宿った状態と考えられていました。穢れを祓うためには、紙や草木で作った人形(ひとがた)で患部を撫でて邪気を移し、それを川や海、山へと流し去る「撫でもの(なでもの)」の儀式が行われていました。「痛みの実体を他所へ移し替えて遠ざける」という発想は、まさに「痛いの痛いの飛んでいけ」の根底に流れる精神構造そのものです。
同時に深く結びついているのが、医療や処置を意味する「手当ての語源」です。近代医学が発展する遥か昔、治療の原初形態は「病変や患部に直接自分の手を当てること」でした。母親や看病人が患部に手のひらを密着させ、温もりを伝えながら邪気払いの言葉を唱える。この一連の身体的所作が名詞化した言葉こそが「手当て」であり、「痛いの痛いの飛んでいけ」はその精神を最も原初的な形で残した生活文化の遺産といえます。
【科学的根拠】なぜ本当に痛みが消えるのか?医学と脳科学が証明した理由
「単なる気休めの迷信にすぎない」という見方は、現代の生理学および神経科学の前では完全に覆されます。手を当てて優しくさすりながら言葉をかける行為には、痛みを物理的・生理学的に遮断する3つの明確な科学的根拠が存在します。
1. 脊髄で痛みの門を閉ざす「ゲートコントロール理論」
神経科学における最大の根拠が、1965年にロナルド・メルザック(Ronald Melzack)とパトリック・ウォール(Patrick Wall)が提唱したゲートコントロール理論です。人間の皮膚感覚には、痛みを伝える細い神経線維(C線維やAδ線維)と、触覚や圧迫感を伝える太い神経線維(Aβ線維)があります。
痛む部位を手でさすったり圧迫したりすると、太いAβ線維が刺激され、痛覚信号よりも速いスピードで脊髄後角に情報が届きます。すると脊髄にある抑制性神経細胞が作動し、後から上がってくる痛覚信号の「門(ゲート)」を閉じてしまうのです。その結果、脳へ届く痛みのシグナルが劇的に減弱します。大人が打撲した部位を無意識に手で押さえるのも、この神経生理学的反射に基づいています。
2. オキシトシン分泌を促す小児看護のタッチング効果
医療現場の小児看護において、看護師や親が患部や背中に優しく触れるケアをタッチング効果と呼びます。秒速3〜5センチメートル程度の優しい速度で肌を撫でると、皮膚の「C触覚線維」が反応し、脳の視床下部からオキシトシンが分泌されます。
「愛情ホルモン」とも呼ばれるオキシトシンは、自律神経の交感神経の暴走を鎮め、副交感神経を優位に導きます。心拍数や血圧を安定させ、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制することで、子どものパニック状態を解き、筋緊張性の痛みを急速に和らげる効果を発揮します。
3. プラセボ効果と内因性オピオイドによる痛み緩和
脳科学的な観点では、プラセボ効果による痛み緩和も見逃せません。「大好きな母親や父親が魔法をかけてくれたから、もう大丈夫」という強い期待と信頼感が前頭前野で生じると、脳内ではモルヒネに匹敵する鎮痛作用を持つ「エンドルフィン」などの内因性オピオイドが放出されます。さらに「遠くへ飛んでいった」という視覚的イメージに意識が集中することで、痛覚認知ネットワークから注意が逸れる「ディストラクション(注意転換)効果」が相乗的に働き、痛みの体感強度が低下します。

【データ比較検証】「手当てとおまじない」がもたらす身体的・心理的変化
言葉がけと皮膚接触(タッチング)がもたらす作用機序について、臨床データや生理学的基準をもとに詳細な比較表にまとめました。
| 項目 | 詳細・数値データ | 一般的な基準・相場 | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| ゲートコントロール機構 (脊髄レベルの遮断) | Aβ線維の伝導速度は時速約140〜250km(痛覚C線維の時速約3〜7kmの約30〜50倍)。触覚刺激が瞬時に脊髄後角の伝達を抑制。 | 物理的圧迫・摩擦開始から数百ミリ秒以内に神経応答が発生。 | 直感的な反射行動でありながら、極めて即効性の高い神経ブロック機能として極めて優秀。 |
| タッチング・オキシトシン分泌 (内分泌・自律神経系) | 10分間のスキンシップで唾液中オキシトシン濃度が約20〜30%上昇、コルチゾール(ストレス指標)が有意に低下。 | 秒速約3〜5cmの優しい撫で動作で最も強く受容器が反応。 | 単に声をかけるだけよりも、直接触れ合うスキンシップが医学的鎮静において不可欠であることを証明。 |
| 言語的暗示・プラセボ効果 (中枢神経・情動系) | 小児の軽度外傷における主観的疼痛スケール(VAS)が、声かけと手当てにより平均30〜50%軽減する報告が多数。 | 信頼関係(ラポール)の深さに比例して内因性オピオイドの分泌量が増加。 | 他人の言葉よりも「親や保護者」の言葉であるほど、プラセボ鎮痛は劇的に増大する。 |
| 注意の認知的転換(Distraction) (前頭前野の認知制御) | 痛みの局所から「遠くのお山」へ意識を向けることで、痛覚関連脳領域(体性感覚野・島皮質)の血流活性化が20%以上抑制。 | 小児採血時の映像・会話ディストラクションと同等の鎮痛アプローチ。 | 「飛んでいった先」を具体的に想像させる会話誘導は、認知行動療法的な理に適ったアプローチ。 |
文化比較と実態検証|海外の英語表現と親子のリアルな受け止め
日本固有のおまじないに思えるこの文化ですが、海を越えた海外にも驚くほど類似した慣習が存在します。言語や表現の差異を比較すると、人間の本能的な養育行動の普遍性が浮き彫りになります。
英語圏で最も代表的な英語表現は、怪我をした部位にキスをする「Let me kiss it better」や「Kiss the boo-boo away」です(※boo-booは子どもの軽い怪我や痛みを指す幼児語)。傷口にキスをして痛みを吸い取ったり吹き飛ばしたりする行為は、まさに日本の「痛いの痛いの飛んでいけ」と文化的同一性を持っています。
また、欧米の童謡(Nursery Rhyme)のなかには、雨を遠ざける「Rain, rain, go away, Come again another day」という有名なフレーズがあります。これを文字って「Pain, pain, go away, Don't come back another day」(痛みよ、飛んでいけ、もう二度と戻ってくるな)と語りかける家庭も多く見られます。
都内の小児科クリニックに勤務する看護師は、現場での実感を次のように証言しています。
「注射や処置を怖がるお子さんに対し、処置後に保護者の方が患部を押さえて『飛んでいけ』と声をかけると、心拍モニターの数値が目に見えて落ち着きます。単なるおまじないではなく、子どもが『痛みを共有してもらい、守られている』と確信するスイッチになっているのです」(小児病棟勤務・看護師の手記より)
SNSや育児コミュニティの生の声を見ても、「大人になってから偏頭痛のときにパートナーにさすってもらったら妙に落ち着いた」「子どもに言っていたつもりが、自分自身の育児ストレスが和らいでいた」といった投稿が散見されます。皮膚接触と言語的共感は、子どもだけでなく大人の脳にも同様の生理学的安心をもたらしているのです。

一般に知られていない盲点とやってはいけないNG対応
科学的根拠が豊富な「痛いの痛いの飛んでいけ」ですが、使い方を誤ると子どもの心身に悪影響を及ぼす危険性があります。知っておくべき盲点とNG対応を整理しました。
- 重篤な怪我・内因性疼痛の見落とし(受診遅れの危険):
骨折、靭帯損傷、頭部強打、激しい腹痛(虫垂炎や腸重積など)に対して「飛んでいけ」だけで済ませてしまうのは厳禁です。子どもの我慢強さやプラセボ効果によって一時的に痛みが隠蔽され、外科的処置が遅れるリスクがあります。腫れや皮下出血、痛みの持続がある場合は速やかに医療機関を受診してください。 - 痛みの存在を否定する声かけ(感情の抑圧):
「痛いの痛いの飛んでいけ! ほら、もう痛くないでしょ? 泣かないの!」と痛みを一方的に打ち切る対応は逆効果です。心理学において、子どもが感じている身体的苦痛を否定されると「自分の感覚を信じられなくなる」「弱音を吐いてはいけない」という心理的抑圧(インバリデーション)を引き起こします。 - 痛みを身近な他者に押し付ける表現の配慮:
続きのバリエーションにある「〇〇ちゃんのお尻へ飛んでいけ」といった転嫁フレーズは、幼児期の兄弟喧嘩や友達関係においては注意が必要です。「自分の痛みを他人に押し付けてよい」と誤解させないよう、自然の山や空など無害な対象へ飛ばす言葉選びが推奨されます。
【プロの結論】発達心理学と愛着理論から見出す親子の絆の守り方
発達心理学者ジョン・ボウルビィが提唱した愛着理論(アタッチメント理論)において、子どもが外界で恐怖や痛みを感じたとき、無条件に逃げ込める避難場所を「安全の基地(Secure Base)」と呼びます。「痛いの痛いの飛んでいけ」の本質は、単なる鎮痛テクニックではなく、子どもに対して「私はあなたの痛みを理解し、いつでも受け止める」という安全の基地を再確認させる儀式に他なりません。
デジタル機器に囲まれ、直接的な肌のふれあいや対面コミュニケーションが希薄になりがちな現代において、手のひらから伝わる体温と声の響きは、子どもの脳と心に健全な自己肯定感を育みます。「痛かったね」とまず痛みに寄り添い、それから「遠くのお山へ飛んでいけ」と手を当てる。この数秒間のスキンシップこそが、将来にわたって情緒的に安定した人格を築く確かな土台となるのです。
【痛いの痛いの飛んでいけ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:続きのフレーズで最も標準的なものはどれですか?
A1:全国的に最も広く定着しているのは「遠くのお山へ飛んでいけ」です。その他にも「すずめの学校へ」「お空の雲へ」「鬼ヶ島へ」など、地域や民話、家庭環境ごとに多彩なバリエーションが存在します。
Q2:大人に対しても「手当て」の鎮痛効果はありますか?
A2:十分にあります。痛覚を遮断するゲートコントロール理論や、皮膚刺激によるオキシトシン分泌のメカニズムは成人でも全く同様に機能します。信頼できるパートナーや家族に痛む箇所(肩こりや腰痛、頭痛など)を優しくさすってもらうだけでも、副交感神経が優位になり主観的疼痛は大幅に緩和されます。
Q3:英語圏ではどのように表現するのが自然ですか?
A3:子どもの軽い怪我に対しては「Let me kiss it better.(キスして治してあげるね)」や「Kiss the boo-boo away.」が最も自然な日常表現です。言葉だけでなく「患部に軽く息を吹きかけたりキスをする」という身体的アプローチがセットになっている点も共通しています。
Q4:子どもがいつまでも泣き止まないときの適切な声かけは?
A4:無理に痛みを消そうと焦らず、まずは「すごく痛かったね、びっくりしたね」と子どもの感情をそのまま言葉にしてオウム返しで共感(受容)してください。安心感を得てから優しく患部を撫で、「飛んでいけ」と意識を外に向けることで、内因性オピオイドの分泌が促され落ち着きを取り戻しやすくなります。
まとめ:科学と愛情が織りなす「世界で最も身近な処方箋」
古くから口承で受け継がれてきた「痛いの痛いの飛んでいけ」。その素朴な響きには、日本の風土が育んだ言霊と手当ての精神、そして現代医学が裏付ける神経生理学の叡智が見事に凝縮されていました。
皮膚を通じて脳を癒やし、言葉によって不安を解き放つ。道具も費用もいらないこのアプローチは、時代を超えて受け継がれるべき「最も身近で温かな処方箋」です。もし身近な大切な人が痛みに直面したときは、迷わずそっと手を伸ばし、優しく温かな声で痛みを遠くのお山へと解き放ってあげてください。 (出典: 痛い の 痛い の 飛ん で いけ(Yahoo!ニュース))