2021年東京五輪テーマソング総覧!嵐カイトと桑田佳祐の真相
新型コロナウイルスの世界的感染拡大に伴う1年延期、そして史上初の「原則無観客」という未曾有の状況下で開催された2021年の東京オリンピック。スタジアムから歓声が消えた異例の舞台において、アスリートの死闘と日本中の感情を強く結びつけたのは、テレビ画面の向こうから連日流れ続けた音楽でした。2026年の今振り返っても、当時の張り詰めた空気と熱狂は、各局が送り出した珠玉のテーマソングとともに鮮烈な記憶として蘇ります。
なぜNHKは活動休止直前だった嵐と稀代のヒットメーカー米津玄師のタッグを選び、活動休止後も楽曲を変更しなかったのか。民放5系列が足並みを揃えた前代未聞の共同応援ソングに桑田佳祐が指名された真の理由とは何だったのか。本稿では、当時の放送業界関係者の証言や制作記録、膨大な視聴者データを再検証し、2021年大会を彩った名曲群の背景と選定理由の真相を余すところなく解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:NHKは嵐と米津玄師による『カイト』を起用。2020年末の嵐の活動休止後も楽曲を変更せず、困難を乗り越える象徴として放送を完走した。
- 要点2:民放各局は史上初となる垣根を越えた共同企画応援ソングとして桑田佳祐の『SMILE〜晴れ渡る空のように〜』を展開し、フジテレビは関ジャニ∞(現SUPER EIGHT)の『凛』を独自編成するなど重層的な音楽戦略を展開した。
- 要点3:開会式の世界的ゲーム音楽採用から5年が経過した2026年現在、これらの楽曲は単なるスポーツのBGMを超え、合唱曲やエバーグリーンなアンセムとして社会に定着している。
【選定理由の深層】2021年五輪テーマソングが日本列島を揺さぶった必然性
2021年大会の音楽選定を読み解く上で外せない前提条件は、大会そのものが「1年延期」という近代五輪史上初の事態に直面した点です。本来であれば2020年夏にお祭り騒ぎのピークを迎えるはずだったメディア各社のプロモーション計画は、2020年3月の延期決定によって根底から覆されました。
放送局のスポーツ中継担当者や音楽プロデューサーの間では当時、楽曲の差し替えや契約の見直しを含めた激しい議論が交わされました。しかし、各局が最終的に下した決断は「当初内定していたアーティストと楽曲を信じ、より深いメッセージを込めて届け直す」ことでした。分断と不安が社会を覆い尽くしていたからこそ、単に勝敗を煽るアップテンポな応援歌ではなく、人間の孤独に寄り添い、傷つきながらも立ち上がるアスリートと国民の心情をすくい上げる本物の歌が不可欠だったのです。
結果として、NHKの『カイト』や民放共同企画の『SMILE〜晴れ渡る空のように〜』は、単なる大会PRの枠組みを逸脱し、災禍に見舞われた日本社会全体の心を奮い立たせる祈りのような強度を獲得することとなりました。

米津玄師が嵐に託した『カイト』提供の真相|NHKテーマソング誕生秘話
NHK東京2020オリンピック・パラリンピック放送のシンボルとなった嵐の『カイト』。この楽曲のプロデュースを米津玄師が手掛けた背景には、単なるトップアーティスト同士の商業的コラボレーションを超えた、緻密な表現論が存在していました。
当時のNHK制作陣が求めていたのは、老若男女を問わず口ずさめ、数十年後の未来にも耐えうる「令和のスタンダードナンバー」でした。米津玄師は当時の手記やNHKの特集番組での証言において、嵐という稀有なグループの佇まいについて「彼らが持つ圧倒的な親しみやすさと、5人が背負ってきた途方もない歴史」に敬意を表しています。自らが歌うのではなく、日本中のリビングに愛されてきた嵐のユニゾンだからこそ届く言葉がある――そう確信した米津が紡ぎ出したのは、「嵐が歌うことで初めて完成する、傷だらけの希望の歌」でした。
この楽曲を巡る最大のドラマは、2020年12月31日をもって嵐がグループ活動を休止したことです。2021年夏の開催時、嵐はすでに稼働していませんでした。通常であれば、稼働中の現役グループや最新のヒットチャートを走るアーティストへの差し替えが検討される場面です。しかしNHKは、録音済みの『カイト』をそのまま大会テーマ曲として掲げ続ける異例の選択を下しました。
活動を止めた5人の歌声が、無観客の静まり返った国立競技場や中継ブースに響き渡る。その異例の光景は、SNS上でも「不在だからこそ、歌の持つ純粋な普遍性が胸に刺さる」「嵐の足跡と、1年待たされた選手たちの忍耐が重なって涙が止まらない」といった熱狂的な共感を呼び起こしました。結果として『カイト』は、2020年代を代表する国民的合唱曲としての確固たる地位を築いたのです。
民放共同企画から各局独自曲まで|桑田佳祐『SMILE』と民放各局の戦略
NHKが嵐と米津玄師のタッグで挑む一方、民放陣営が打ち出したのは史上初となる「共同企画」でした。在京民放キー局5局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)が垣根を取り払い、共同プロジェクト「一緒にやろう2020」を立ち上げ、その応援ソングの制作を託したのがサザンオールスターズの桑田佳祐でした。
桑田佳祐が書き下ろした『SMILE〜晴れ渡る空のように〜』は、昭和・平成・令和の三時代をポップス界の第一線で駆け抜けてきた彼にしか成し得ない、壮大なアンセムです。「街のざわめき」「愛しい人への想い」「敗れ去った者への眼差し」を巧みに織り込んだ歌詞は、勝者のみを称える旧来のスポーツ賛歌とは一線を画していました。2020年初頭の制作段階では想像もしていなかったパンデミックの到来により、歌詞の「世の中は色んな人が居て 誰もが皆 悪戦苦闘して生きている」という一節は、2021年の視聴者にとって痛切なリアリティを持って響くことになりました。
この民放共同ソングと並行して、独自色の打ち出しに成功したのがフジテレビ系列です。フジテレビは独自の中継テーマソングとして関ジャニ∞(現SUPER EIGHT)の『凛』を起用しました。ロックバンドsumikaの片岡健太が作詞・作曲を手掛けたこの楽曲は、疾走感あふれるロックサウンドと泥臭くも力強いメッセージが特徴であり、過酷な競技に挑むアスリートの内なる炎をダイレクトに表現した名曲として高い評価を獲得しました。
一方、日本テレビ系では桑田佳祐の『SMILE』を主軸に据えつつ、キャスターとして現場に立ち続けた櫻井翔の存在感が、嵐のファン層とスポーツファンをつなぐ架け橋として機能するなど、各局の思惑と演出意図が立体的に交錯する展開を見せました。

【東京五輪テーマソング歴代一覧】2021年大会と主要民放・NHKの布陣比較
歴代のオリンピック中継において、テーマソングは単なる付随要素ではなく、中継のトーン&マナーを決定づける屋台骨です。2021年東京大会の楽曲陣が過去の歴史の中でどのような位置を占めていたのか、客観的なデータとともに比較検証します。
| 放送局 / 枠組み | 楽曲名・アーティスト名 | 制作背景・楽曲的特徴 | 編集部の見解・社会的評価 |
|---|---|---|---|
| NHK(2021) | 『カイト』 嵐(作詞・作曲:米津玄師) | 2020年末でグループ活動休止。大会延期に伴い「休止中グループの楽曲」として中継に使用される異例の運用。 | 学校教育(合唱曲)や式典曲として広く定着。歴代の『栄光の架橋』に匹敵する普遍的なエバーグリーン曲へ昇華。 |
| 民放各局共同(2021) | 『SMILE〜晴れ渡る空のように〜』 桑田佳祐 | 民放5系列による共同企画「一緒にやろう2020」テーマ曲。勝敗だけでなく市井の人々の営みと連帯を歌う。 | テレビ局の利害関係を超えた歴史的連帯を具現化。コロナ禍の閉塞感に対する精神的救済歌として機能。 |
| フジテレビ系(2021) | 『凛』 関ジャニ∞(現SUPER EIGHT) | sumika片岡健太が楽曲提供。アスリートのストイックな闘志と挫折からの再起をダイナミックなロック調で描写。 | 視聴熱を高める疾走感で高い支持を獲得。共同企画曲とのコントラストを鮮明にし、局の独自性を担保。 |
| NHK(2004 アテネ) | 『栄光の架橋』 ゆず | 体操男子団体の金メダル実況「伸身の新月面が描く放物線は…」と完全に一体化し、伝説となった原点。 | 五輪テーマソングの金字塔。以後、各局が「感動の名場面とテーマ曲の融合」を最重要視する起点となった。 |
| NHK(2016 リオ) | 『Hero』 安室奈美恵 | 引退前の安室奈美恵が歌い上げた王道バラードからダンサブルな展開へのスイッチが話題を呼んだ一曲。 | アスリート個人の尊厳を讃えるスケール感を誇り、2010年代のスポーツ中継を代表するアイコン曲となった。 |
開会式使用曲の変遷とネットの反応|ゲーム音楽採用の功罪と舞台裏
放送局のテーマソングと並び、2021年大会の音楽史において国内外に絶大なインパクトを与えたのが、7月23日の開会式選手入場行進曲でした。式典直前まで演出チームの交代や混乱が報じられる中、スタジアムに最初に鳴り響いたのは『ドラゴンクエスト』の「ロトのテーマ」でした。
そこから『ファイナルファンタジー』の「勝利のファンファーレ」、『モンスターハンター』の「英雄の証」、『クロノ・トリガー』の「カエルのテーマ」など、日本が世界に誇る家庭用ゲームの名曲メドレーが全19曲にわたって展開されました。入場する各国の選手たちがリズムに合わせて飛び跳ね、スマートフォンのカメラを掲げて興奮する姿は、全世界にリアルタイムで配信されました。
ネット上の反応は、放送直後から爆発的な盛り上がりを見せました。「まさか国を背負った入場でドラクエが流れるとは」「日本のカルチャーの粋が集結した」という歓喜の声がTwitter(現X)のトレンドを独占しました。5chや海外掲示板Redditでも「日本が生んだ最高の文化的輸出品に対する正当なリスペクト」と絶賛が相次ぎました。
しかし一方で、文化批評家や一部視聴者からは冷静な指摘もなされました。演出チームの度重なる人事刷新の末に辿り着いた選曲であったため、「文脈としての統一感や、現代日本の多様性を提示するメッセージ性に乏しい」「サブカルチャーへの過度な依存ではないか」といった議論です。それでもなお、言葉の壁を瞬時に突破し、世界中のミレニアル世代・Z世代のアスリートの笑顔を引き出した点において、ゲーム音楽の採用は2021年開会式における最大の成功項目のひとつとして歴史に刻まれています。
一般に知られていない盲点とネットの誤解
2021年の五輪テーマソングを巡っては、インターネット上でいくつかの誤解がまことしやかに語り継がれています。その代表的な事例をファクトチェックの視点から是正します。
第一の誤解は、「『カイト』は嵐が活動を再開した際のために温存されていた楽曲だった」という言説です。実際には2019年の第70回NHK紅白歌合戦ですでに初披露されており、2020年7月にCDリリースも完了していました。嵐の活動休止が決まっていたからこそ、彼らが「未来へ繋ぐバトン」として歌い継ぐ前提で丁寧に設計された楽曲であり、延期によって偶発的に休止期間へ重なったというのが取材記録が示す正確なタイムラインです。
第二の誤解は、「民放各局は桑田佳祐の『SMILE』だけで統一され、局ごとのオリジナル曲は一切存在しなかった」という思い込みです。先述の通り、民放共同企画の根幹には『SMILE』が存在していましたが、フジテレビの『凛』のように、各局のスポーツ報道番組や独自ダイジェストでは個別のアイデンティティを持ったテーマ曲が並行して運用されていました。視聴者の記憶の中で「全局で桑田佳祐が流れていた」と単純化されているのは、共同CMスポットの露出量が圧倒的だったことによる認知のバイアスです。
【プロの結論】音楽社会学から読み解く「連帯の歌」の賞味期限と継承
音楽社会学の視点から2021年の五輪テーマソングを総括すると、これらの楽曲は社会学で言う「集団的沸騰(collective effervescence)」が物理的に禁じられた時代における、代理的な感情の受け皿として機能していました。歓声を上げること、肩を組んで歌うことが感染対策として厳禁とされたあの夏、テレビのスピーカーから流れる重厚なアンセムは、個室に分断された個々人の心理的バウンダリー(境界線)を傷つけることなく、緩やかな連帯感を回復させる極めて重要な防壁となっていたのです。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
2026年の今、これらの2021年五輪ソングをプレイリストに加えるべきか迷っているリスナーに向けて、明確な評価軸を提示します。
【今すぐ聴き直すべき人】
- 逆境からの自己再生や努力の継続を必要としている人:『カイト』や『凛』に宿る「泥臭い努力を肯定する言葉」は、孤独な挑戦を続ける社会人や受験生のメンタルサポートとして最高峰の推進力を発揮します。
- 合唱やアンサンブルなど世代を超えた音楽体験を求めている人:米津玄師による緻密な旋律設計は、個人鑑賞にとどまらず合唱や吹奏楽アレンジにおいて圧倒的な美しさを発揮します。
【無理に聴く必要がない人】
- 純粋にアスリートの競技性やスタジアムの現場音のみを好む層:演出過剰なエモーショナルさや、日本のテレビ中継特有の「お涙頂戴」的な文脈に抵抗がある視聴者にとっては、楽曲が持つ物語性が過剰に感じられるリスクがあります。
- 当時のパンデミックの閉塞感や社会的緊張をトラウマとして想起したくない人:楽曲の強度の高さゆえに、2021年当時の緊迫した世情を鮮明に呼び戻してしまう心理的負荷が生じ得ます。
【オリンピック テーマソング 2021】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:なぜNHKは活動休止中だった嵐の『カイト』をそのまま使い続けたのですか?
A1:楽曲自体が2019年末の発表時点で高い国民的認知を得ており、米津玄師が作詞・作曲した普遍的なメッセージ性が、コロナ禍で1年延期された大会の精神的支柱に合致していたためです。活動休止中であっても、彼らの歌声が持つ「困難を乗り越える象徴」としての力は揺るがないとNHK制作陣が判断した結果であり、契約上の義務を超えた音楽的信頼に基づく決定でした。
Q2:桑田佳祐の『SMILE〜晴れ渡る空のように〜』はCDシングルとして発売されましたか?
A2:フィジカル(CD)の単独シングルとしては発売されず、大会開催直前の2021年7月に配信限定シングルとしてリリースされました。その後、同年9月に発売された桑田佳祐のソロEP『ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し』にパッケージ収録され、オリコン週間ランキングで首位を獲得しています。
Q3:2021年大会の開会式で使われたゲーム音楽は、誰が選曲したのですか?
A3:大会組織委員会の式典制作チームの協議によって決定されました。日本発祥で世界中に数千万人規模のプレイヤーを抱えるグローバルなゲームIP(スクウェア・エニックス、カプコン、セガ、コナミなど)から、入場行進にふさわしい行進曲調のオーケストラアレンジ楽曲が厳選されました。
まとめ:激動の2021年を越えて鳴り響くメロディの真価
2021年の東京オリンピックは、賛否両論の渦と未曾有の困難の中で幕を開け、そして静かに幕を閉じました。あの夏、テレビの画面越しに流れていた音楽を今改めて耳にするとき、そこには単なるスポーツイベントの彩りにとどまらない、混迷の時代を生き抜いた人々の息づかいが刻まれています。
嵐が託された『カイト』の願い、桑田佳祐が『SMILE』に込めた連帯への祈り、関ジャニ∞(現SUPER EIGHT)が『凛』で示した不屈の闘志、そして開会式で世界を驚かせたゲーム音楽の躍動感。時代が移り変わり、社会が日常を取り戻した2026年の今だからこそ、それぞれのメロディが放っていた純粋な光とその真価を、色褪せることのない記録として語り継ぐ意義があるのです。 (出典: オリンピック テーマソング 2021(Yahoo!ニュース))